オーディオ 試行記録

多くの個人プログやネット記事に助けられました。私の経験を還元したくです。

HIFIMAN SUNDARA Closed-Back に規格外のイヤーパッドを装着

せっかく事前予約までして手に入れたヘッドフォンでしたが、如何せん人より大きな私の耳には合わず使用時間一時間も満たない状態でずっと棚に置いてありました。約半月を経てイヤーパッド交換に挑みました。

他機種のときにはヘッドフォン紹介を兼ねた購入経緯を書いていますが、この機種は別記事で開封の様子や装着感、音質の第一印象などを記しておりますので省略しました。ご興味ありましたら、そちらもご参照ください。

soundsmind.hatenablog.com

サードパーティ製品選定

純正品のサイズが合わないとき、サードパーティ製品にサイズの違うものがあると有り難いです。武骨な自作よりは美しい既製品です。

HIFIMAN の丸いほう

HIFIMAN のヘッドフォン形状はざっくり「丸い形」と「わらじのような形」との2種に分けられます。ヘッドフォンの写真が並んでいる HIFIMAN ストアのページのリンクを置いておきますので、形状を確認したい方はご覧になってみてください。
ヘッドホン | HIFIMANJAPAN Online Store

この SUNDARA Closed-Back はもちろん丸いほうで、この機種の元となる開放型の SUNDARA も丸いほうです。この「丸いほう」には、他にも HE400se や HE6se といった機種があります。

丸いほうのイヤーパッド

オンラインショップで純正品の丸いイヤーパッドを見ますと、使用できる機種には HIFIMAN の「丸いほう」の名がズラッと並びます。以下の概略にはたくさんの機種名が書かれ、リンク先に遷移しなくても確認ができます。

store.hifiman.jp

この機種情報をもとに、サードパーティ製品を検索してみました。様々なものが見つかりましたが、耳を収める穴の大きさは純正品と変わらない様子のものが多く「これだ」というものには出会えませんでした。自分の耳には 65mm 以上の縦幅が必要なのですが、純正品の穴径 60mm と同様のようでした。

となりますと、いつものように「規格外のイヤーパッドを無理にでも装着」という流れになります。今回は有難いことに、HIFIMAN が丸いほうのイヤーパッドを嵌めるためのリングパーツを流通、販売してくれています。

store.hifiman.jp

サードパーティ製品から自作へと方針を切り替え、パーツを注文したのが SUNDARA Closed-Back を入手した当日でした。約半月を経て商品が無事届きました。

規格外のイヤーパッド装着

いきなりの失敗

失敗談というのは、ときに成功談よりも役に立つ場合があります。ですので、同じ轍を踏む方が減ることを願いながら包み隠さず失敗を記します。

入手したパーツがこちら。四箇所に爪があり、これに引っ掛けることでヘッドフォン本体に取り付ける仕組みです。

購入したリングパーツ。四方に爪があります。

この爪が内側から外側に向けて出ているので、外すときには外側から内側に向けリングを縮めるように力を加えると外せそうです。このパーツの形状をイメージしながら、SUNDARA Closed-Back  のイヤーパッド内側に指を突っ込み力を加えます。

外れません。ビクともしません。

慌ててネット検索し、開放型 SUNDARA で外している方の動画を見てみました。結果、特に新しい要素は無く自分の想定と同じようなことをしていました。さほど力も加えていないことが動画から伝わります。一方、私のはちょっとやそっとでは外れてくれません。

買ったばかりのヘッドフォンに付いていた純正品のイヤーパッドを壊してしまうと思うとかなりの抵抗感がありましたが「スペアパーツは買ってある。最悪、壊れてもいい。」と割り切り、力づくで外しました。「バチッ」と一箇所の爪が外れたような音が鳴り、ちょっとだけイヤーパッドが浮きました。

これで視認しながら作業ができますので、力加減もしやすくなります。隙間を覗いてみました。

「違うじゃないか ! 」

SUNDARA Closed-Back のイヤーパッド

隙間から見えた爪は非常に小さなものでした。

イヤーパッドを軽く上下左右にずらしながら爪を全て外しました。全部で 6箇所に爪がありました。

爪の向きも逆。外側から内側に向けて出ています。外す時は内側から外へと広げるように力を加えるのが正解でした。よく折れなかったと思いました。逆方向に力を加えていたのを思い出しゾッとしました。

ちなみにパーツの直径は購入したものと同じでした。折角なので比較写真も撮りました。

SUNDARA Closed-Back のイヤーパッド。爪6本(上・中)。直径は同じ(下)。

外したついでにヘッドフォンのイヤーカップ側の写真を撮影しました。穴が横長に広がっています。耳の形状に近い縦長でないのは珍しいのではないでしょうか。私は初めて目にしました。

SUNDARA Closed-Backのドライバ。シリアルNo.はボカしました。

破壊せずに無事に外せたのは良かったのですが、使えもしない無駄なパーツを注文し、半月も無意味に放置していました。失敗としか言いようがありません。

振り出しに戻る。イヤーパッド交換を諦めるのか。

HIFIMAN の「丸いほう」とは違う、見たことがない形状のイヤーパッドです。

サイトを確認しなおすと、確かにイヤーパッドやパーツの販売ページにある対応機種に SUNDARA とは書いてありますが「SUNDARA Closed-Back」とは書いてありません。

たくさんの「丸いほう」で使えたとしても、 このヘッドフォンに SUNDARA という名称が付いていたとしても、互換性が突然なくなることもあるという考えに至れなかった自分が悔しいです。

音質のためなら形状を変えるべきで、変わっていること自体はは悪いことではありません。むしろ良いことですので、公式サイトでイヤーパッドの仕様変更をもっとアピールしてくれていたら、とも思いました。こういう良いことは積極的にアピールしてください(笑)。

あらためて、この機種は形状が違うという前提に立ち、冒頭に貼ったHIFIMAN の通販サイトを細かく調べました。リングパーツどころか純正のイヤーパッドも売っていない様子です。

つまり、いま手元にある、この形状のイヤーパッド以外に選択肢は存在しない。そもそも、これさえも簡単には入手でぎず、パッドを壊した瞬間に修理扱いでイヤーパッドをお取り寄せ、それが届くまでヘッドフォンを使えなくなるわけです。

ではどうするのか。いくつか考えました。手っ取り早いのは、このまま傷もシミもない美品として箱に戻し別の方にお譲りすること。次の手が、この装着機構のイヤーパッドが流通することを気長に待ち、このヘッドフォンを戸棚の奥にしまっておくこと。あり得ない選択肢は、他の装着感の良いヘッドフォンがあるにもかかわらず敢えて耳を痛めながらこのイヤーパッドで使うことです。

情報の少ない初物を買うのは難しいですね。とりあえず一晩寝て考えることにしました。

決断。純正品を分解する。

この形状のリングパーツやサードパーティイヤーパッドは当面出ないでしょう。今はまだ需要規模が小さすぎます。この形状が SUNDARA Closed-Back だけで終わったり、マイナーチェンジして形が変わったりしたら、全く出ないことも考えられます。純正品のイヤーパッドであれば、すぐには出ないとしても、数ヶ月もすれば発売されるでしょう。イヤーパッドは消耗品です。今は誰も必要ないかもしれないですが、しばらくしたら必要な方が出てきます。

もしも作業に失敗したら、純正品のイヤーパッドが販売されるまで戸棚行き。将来的に手放すようなことになったら、純正品のイヤーパッド購入し新品を装着した状態で手放そう。と決断し、イヤーパッドを分解することにしました。

イヤーパッド分解

復元できない分解では必ずスペアを用意していましたが、今回ついにオンリーワンの状態で手を出します。

リングパーツの周囲に接着剤で革を貼り付けてありましたので、そこを剥いてしまいます。

イヤーパッドの革を剥きます

高級なものですと、円筒形のクッションと革だけでイヤーパッドが形成されており、取り付け用のプラスチックのリングは嵌めるだけで済むような構造になっているのですが、この製品ではプラスチックのリングがイヤーパッドの底面部分を兼ねていました。こういった仕組みでは、イヤーパッドだけとかマウント用のリングだけを取り替えることはできません。

分解し続けます。

クッション部分を取り出します。

クッション部を取り出しました。まだ革の内側がリングパーツに接着した状態です。外側が 2mm程度の僅かな幅で革と接着されていたのに対し、内側はしっかりと接着剤が塗られている様子です。

指で接着力の弱そうな所を探し、そこから広げるようにして剥がします。

革部分も剥がし完全にバラします。

完全に壊してしまいましたが、無事にパーツを取り出せました。新品なのにクッション部分が薄汚れていて、湿っているのが気になりました。見えない所はこんなもんですね(苦笑)。

パーツを取り出せさえしてしまえば大丈夫。あとは、この貴重なパーツを壊さぬよう細心の注意を払うだけです。

規格外のイヤーパッド選定

取り出したリングは 100mm の円形です。このサイズは過去に ATH-WP900 で試したアッテネーションリング [ Dekoni Audio イヤーパッド 交換用 Fostex TH900/610 アッテネーション・リング ] と同一です。

このサイズの円形、Fostex TH600 互換ですとサードパーティ製のイヤーパッドは数多く存在します。新規で買わずとも予備や過去に使用し捨てずにおいたイヤーパッドにサイズの合うものがあります。そのなかから、いくつかご紹介したいと思います。

Chic Tuant イヤーパッド for FOSTEX (フォステックス) TH600 TH900 etc.

こちらの商品は「ATH-WP900 に規格外のイヤーパッドを装着 - オーディオ 試行記録」で使用したものです。装着感は十分承知しており、SUNDARA Closed-Back でのニーズとは一致しないと試す前から想定できましたので見送りました。

この商品は、耳のサイズに関する問題は全くありません。しかし、イヤーパッドの厚さはさほどでもないので、側圧が高いヘッドフォンで使用すると耳がドライバに接触してしまいます。SUNDARA Closed-Back の側圧は非常に強いため、耳とドライバとの接触は不可避。上記の結論となった次第です。

YAXI イヤーパッド LTH-900

このイヤーパッドは別のヘッドフォンで一時期使用していまして、現在は使用しておらず保管していたものでした。この製品の珍しい特徴は、傾斜が「前後」ではなく「上下」についているところです。

よく見られる傾斜は、耳の裏側・後頭部側を厚くし、耳の前・頬側を薄くしてあるというものです。これには、ドライバを耳と平行に保ったり、場合によっては若干ドライバが前方向に傾き音が前方から来るように感じられたりするという狙いがあります。SUNDARA Closed-Back の傾斜も前後です。

SUNDARA CB の純正イヤーパッドも耳の前を薄く、後ろを厚くしてあります。

この YAXI のイヤーバッドは上下です。

耳の上・頭の部分に比べ、耳の下・顎関節に近い部分は顔の幅が細いのでドライバを平行にするには下を厚くするという考え方で上を絞って下を厚くしています。これはこれで理にかなっています。

余談。「だったら耳の後ろを厚くしつつ、かつ後ろは下方にいくほど更に厚くなるようなイヤーパッドを作ればいいじゃないか」という話になりますが、そういう凝った作りのイヤーパッドもあります。SONY MDR-Z1R はそうなっています。私の知る限りでは 他には見たことありません。他にもあるかもしれません。

話題を戻しまして。このイヤーパッドを使用していた期間はソコソコありました。使用するのをやめた理由が「もっと装着感のいいものを探して見つけたから」でしたので、試す価値ありと判断し、試してみました。

TH900 のリングに合うよう設計されているので、SUNDARA Closed-Back のリングの大きさにも合います。リングを留める革の長さも、まるで、SUNDARA Closed-Back の爪の位置に揃えたかのように合っています。(※取り出した部品なので、合うという表現は不味いですね)

YAXI LTH-900 を装着。まるで狙ったかのように適切な革の長さ。

ヘッドフォンに装着しました。リングを入れた革の部分で、イヤーパッドとイヤーカップの間にキャラクターラインを描くようなデザインに変わりました。これはこれでカッコよさがあります。偶然とはいえ、純正品よりこちらのほうが良いという人が出ても不思議ではない仕上がりです。

ヘッドフォンに装着。リングを入れた革の部分がキャラクターラインになっています。

使用してみました。純正品と違い穴が十分広いため耳を潰しません。いい感じです。「これはいけるかも」と音楽鑑賞を続けてみました。30 分後「あぁ、これで使用するのをやめたんだ」と思い出し、外しました。

人の耳は、上側と下の耳たぶ側とどちらのほうが立っていると問われれば、上側と答えるでしょう。また接触や圧迫に弱く痛みを感じやすいのはどちらと問われれば上側と答えるでしょう。下側より上側のほうが接触や圧迫に弱く痛みます。

一方、このイヤーパッドは上が絞れていて下が膨らんでいます。つまり、耳の上の方は下に比べて相対的に薄く、ドライバに耳が接触してしまいやすいという形状です。

そして、ヘッドフォン本体の側圧が高ければ高いほどイヤーパッドは潰れ耳を収める空間が減ります。SUNDARA Closed-Back の側圧は非常に高いです。このイヤーパッドの上部の厚さでは私の耳を守り切れませんでした。SUNDARA Closed-Back でなければ、もう少し長時間使用できたとは思います。しかし、現在使用していないことからもわかるように、この耳上部の厚さですと元々私には足りませんでした。ヘッドフォンの側圧と耳の形状でイヤーパッドの装着感は変わりますので、あくまで「私の耳では」「SUNDARA Closed-Back の側圧では」という前提での話ですし、また多くのイヤーパッドを使用した感想としては、むしろ高評価の製品に位置します。

とはいえ、耳の上部が痛くなり十分な時間使用できませんでしたので、他のイヤーパッドを試すこととします。

BRAINWAVZ Angled Oval Headphone Memory Foam Earpads

Angled Oval Headphone Memory Foam Earpadswww.brainwavzaudio.com

こちらの商品は「FOCAL STELLIA に規格外のイヤーパッドを装着 - オーディオ 試行記録」でご紹介したもので、装着感に満足しています。STELLIA と SUNDARA Closed-Back  のイヤーカップ形状やサイズが全く違うところから想像つくかもしれませんが、このイヤーパッドは SUNDARA Closed-Back と全く合いません。

しかし、装着感には間違いないという確信があるのと、いま手元にあるのとで、どうしても試したく、強引に嵌めてみることにしました。途中、イヤーパッドの革が切れるかパーツが割れるかという無理な作業になりましたが、なんとか嵌めることがでました。

楕円のイヤーパッドを無理やり円にしたので、革が切れそうな膨らみが出来てます。爪が隠れてしまうので穴を開けました。ここもパンパンに張っていて、徐々に穴が広がりそうな予感がします。

無理に嵌めたのでリング状の膨らみができ、爪を出すための穴も広がりそう。

怯まずヘッドフォンに装着します。無事しっかりと嵌めることができました。装着感の良さそうな見た目です。

横方向はきついが縦方向に余裕あり。厚く装着感良さそう。

使用してみました。相変わらず側圧がきついですが、耳は全く痛くありません。良い感じです。

一時間ほどして外しました。頭の横の両サイド、位置は耳の上方でこめかみの高さあたりが痛くなりました。耳自体は痛くありません。この痛みは既に愛用している快適なヘッドフォンでも 3 ~ 4 時間続けて使用したりすると起こります。原因はイヤーパッドではなく側圧です。

イヤーパッドの問題が解決したら次の問題が見つかってしまいました。とはいえ、これでイヤーパッドは解決の目途が立ちました。一旦はこれでOKとし、もし良さそうなイヤーパッドを見つけたら買って試したいと思います。

おまけ。側圧の調整。

側圧を緩めるためヘッドバンドを手でグイグイと広げてみました。20~30分は試しましたが簡単には緩んでくれそうにありません。かといってこのままの状態では長時間使用できませんので、それなりの時間をかけバネを矯正することにしました。

段ボール紙とクラフトテープで拘束具を作りました。カットした段ボールを何枚か重ね、クラフトテープで巻いただけのものです。この手のものは段ボールみたいな柔らかい素材で作るとヘッドフォンが傷つかないので良いです。

悲惨な姿をご覧ください。

段ボールで拘束し、強制的に開いた様子。

気長にやります。きっと数日から数週で程よい側圧になるでしょう。

これをやってしまったら、もう手放すという選択肢は消えてしまいます(笑)。