オーディオ 試行記録

多くの個人プログやネット記事に助けられました。私の経験を還元したくです。

HiBy R6 Pro II 購入後インプレッション

久しぶりに DAP (デジタル オーディオ プレイヤー) を購入しました。
この記事を執筆している 2023/5 時点では、この製品を購入された方の感想や意見がさほどネットにあるわけではなさそうです。であれば、増やす側にまわり少しでも貢献しようと執筆しました。今回は購入後のインプレッションまでを記してみます。

HiBy R6 Pro II

購入動機

いきなりですが、DAP は据え置きタイプの機器に比べて難しいなぁと思います。
買う側の選択も難しいし開発する方のコンセプトワークも難しいと感じます。据え置きタイプは、ある程度ではありますが、筐体が重く大きくなるにつれて音が良くなり値段も高くなるという傾向が見られます*1。その関係性のなかで、買う側は予算内かつ気に入った音色のものを買えばいいのですが、DAP だとそう簡単にはいきません。

DAP は使うシチュエーションが多様過ぎる

難しさの原因のひとつに、DAP を使うシチュエーションが据え置きタイプと比べ多様だという点があります。
据え置きタイプは静かなところで腰を掛けて音を楽しむものですから、静かな環境で良い音であるよう開発されますし評価もします。ところが、DAP を使用するシチュエーションは人によりバラバラ。ある環境では OK だけと別の環境だと NG になったりと、評価基準が一定にはなりません。どのようなシチュエーションでも合格点という最大公約数的なものを開発するのは不可能なのではないかと思うほどです。三つほど具体例を挙げてみたいと思います。

公共交通機関での移動中に使う

通勤や通学など、日々の公共交通機関で音を楽しむシチュエーションの場合です。静かなところで聴き分けられた音が、公共交通機関のなかだと聴き難くて機器の音量を上げてしまうかと思います。
これは当然のことで、地上を走る電車なら 80db 程度、地下鉄ならそれ以上の騒音が常に出ています。都心にお住まいの方なら地下鉄大江戸線をご存じでしょうか、この車内の騒音のピークは 100db 越え。耳栓をしていないと耳を傷めるレベルです。

このような環境下で聴き取れなくなる音の周波数は一定ではありません。人の声の周波数帯から遠い音程から順に、つまり高音や低音から順に聴き取れなくなります。簡単に言うとAMラジオみたいな聴こえ方になります。
聴こえない周波数帯の音を補うべく音量を上げて聴くと、今度は聴き取れていた中音が過剰に大きくなってしまい、立体感に欠いた耳に張り付くような聴こえ方になってしまいます。
そもそも論、そんなに音量を上げてはヘッドフォン難聴まっしぐらですし、音漏れによる周囲への迷惑も避けらません。

結果として、ラジオ品質だと割り切って程々の音量で楽しむか、ノイズキャンセリングイヤホン(ヘッドフォン)で楽しむかの二択になります。
前者であれば、ノイズフロアを極力下げ高音質化した DAP では宝の持ち腐れです。後者であれば、ノイズキャンセリングイヤホンの性能が音質の全てですので、送り出し側の機器は LDAC に対応さえしていれば何だって構いません。結局のところ「公共交通機関は環境が悪すぎるので、Android スマホ以上の性能があっても享受できない」となり「お気に入りのノイズキャンセリングイヤホンを探す」ことが、このシチュエーションで可能な音へのこだわりとなります。「スマホでいいじゃん。DAP は要らないよ。」 という方がいらっしゃいますが、この状況下であれば「その通り」だと思います。

出先のカフェや職場で使う

他の人と空間を共有する場所での事務作業、カフェでの作業や職場での作業などが該当します。そういった環境ですと騒音は 50db ~ 60db 程度。おしゃべりを誰もせず空調の音が最も響く環境なら 50db を切るでしょう。

この程度まで騒音が減りますと、カナル型の有線イヤホンで耳を塞ぐ程度で得られる遮音効果でも繊細な音を楽しむことが適います。とはいえ、実際にその場所で耳栓代わりにカナル型の有線イヤホンをいれた場合とノイズキャンセリングイヤホンを入れた場合とを比較して差が大きく感じたら「まだ有線イヤホンやDAPへの投資はもったいない」と考えた方が良いかと思います。

外部の音をカナル型の有線イヤホンで十分減らせるような環境であれば、失う高音域や低音域を音量で補って聴感のバランスを壊すようなことをせずに済みます。楽曲が持つ音のバランスや響きが実感できる環境ですので、好みのイヤホンに合う DAP を探す喜びも十分に味わえます。
但し、あくまでカナル型の有線イヤホンで得られる遮音性があるから楽しめるというシチュエーションですので、DAP に求める性能はイヤホン特有の性質に応えられるものになっているがどうかが重要になります。
一般的なイヤホンの傾向で大雑把に要求性能を記すなら、BA型のイヤホンはインピーダンスが低くホワイトノイズが出やすいです。マルチBA型ならインピーダンス変動が激しいです。ノイズフロアが低くて低インピーダンス側で粘れるかどうかが大事で、音量を取るための高電圧は必要ありません。
そして何よりも重要なのは、フル充電での再生時間でしょう。これは個人的な事情に大きく左右されます。3時間で良いという方もいれば、10時間は欲しいという方もいらっしゃることでしょう。

出張先のホテルやリモートワークの個室などで使う

極めて静か且つ充電も一応できるという音楽鑑賞に最適な環境だが、手荷物の関係で大きいものは避けたいというシチュエーションです。
この環境なら、徹底的に音質にこだわったイヤホンや DAP を所有する喜びを余すことなく味わえます。充電環境があるという理由で再生時間に関する評価の優先順位を下げる方もいらっしゃるでしょう。

外出先でなく自宅で音楽を聴きながら作業する方のなかにも、このカテゴリにマッチする方がいるかもしれません。電源ケーブル這わせるようなオーディオは置きたくない、作業机の端に小さな DAP とイヤホンが置いてあるぐらいが丁度いい。しかし、音としては何物にも代えがたい最高のお気に入りが欲しい。そんな楽しみ方ですと、高価なイヤホンを何本も買って試していらっしゃるケースが少なくないと思います。

(おまけ) 据え置きタイプ向けの大型ヘッドフォンを接続して使う

ネットの書き込みを見ていると、DAP にこれを求める方がいらっしゃるように見受けます。据え置きタイプへの接続を想定した、インピーダンスが 300Ω もあるような開放型ヘッドフォンを接続するケースです。
どんなシチュエーションで使われるのか、私にはちょっと想像がつきません。公共の場で DAP に接続し使用しているのでしょうか。大型ヘッドフォンにも、屋外で使用することを想定したものや DAP と組み合わせてパフォーマンスが出るものも数多くありますので、DAP に向いていないヘッドフォンを無理して使う必要もありません。

DAP のベストアンサーはシチュエーションで変わると既に書きましたが、据え置きタイプの大型ヘッドフォンを使うシチュエーションというのは DAP にとって最も特異です。必要となる電力、瞬間的なものも恒常的なものも含め、を供給する回路や電源を加えれば DAP の容積は増しますし、低インピーダンスのイヤホンで聴き取れてしまうような微小ノイズが生じやすくなります。両立させようとすれば、大型ヘッドフォンを中途半端に鳴らし低インピーダンスのイヤホンではノイズが気になり、あまりコンパクトでなくバッテリーも持ちが悪いという「どこも優れていない製品」が生まれかねませんし、また存在もします。

使用されるシチュエーションでのベストを目指して設計すればパフォーマンスは伸びます。「どんなイヤホン、ヘッドフォンでも繋げられる」という目標で設計するのであれば、小型軽量化の競争から離脱し、筐体を大きくして大型ヘッドフォン向けの回路や大型パーツを実装するのが肝要です。
据え置きタイプ向けの大型ヘッドフォンで使用する DAP を望んでいらっしゃる方は「大型ヘッドフォン用とイヤホン用に二つ機器を買うのは避けたい、中庸で構わないからオールマイティ1台が欲しい」ということなのでしょうかね。

DAP メーカーは大変だ

ここまで書き、あらためて DAP メーカーは大変だと思う一方、Astell & Kern や SONY はしっかりしたメーカーだとも思いました。

Astell & Kern の製品は、半端な製品は用意せず多様なシチュエーションの一つ一つで最高のものを届けようとしているように感じます。出先のカフェや職場のような環境で楽しむ方向けに A&norma SR35、良質な環境下で最高の音質を求める方に A&ultima SP3000 、据え置き向け大型ヘッドフォンを使いたいが省スペースを望む方向けに  ACRO CA1000 、何が何でも携帯機で高インピーダンスのヘッドフォンを繋ぎたい方向けに KANN MAX、おまけにガジェットマニア向けの A&futura SE180。
ユーザーが音を楽しみたいと望むシチュエーションに合わせ「あなたにベストな機種はこちらです。」と全方位に展開できるラインナップです。中庸な製品はありません。

(上) 左:SR35 右:ACRO CA1000 (下)左:KANN MAX 右:SP3000

SONYWalkman で初めて音楽を外に持ち出した会社らしい品揃えです。まず、公共交通機関向けに WF-1000XM4 や WH-1000XM5。スマホ時代になった今、移動中に音を楽しむという Walkman の DNA がノイズキャンセリングの世界で生きています。
そして Walkman の名を冠した製品は、より良い音を外に持ち出す機器としてラインナップ、出先のカフェや職場向けに NW-ZX707、 良質な環境下で最高を求める方には NW-WM1ZM2。据え置きタイプの大型ヘッドフォンに拘る方には DMP-Z1。
更に、各々のカテゴリで予算の厳しい方向けの廉価版が存在しているところに SONY の強さを感じます。マニアだけでなく一般の方にも目が向いています。

(上) 左:WF-1000XM4 右:NW-ZX707 (下) 左:NW-WM1ZM2 右:DMP-Z1

シチュエーションを明示して

ここまで長々と前置きを書いた理由は、DAP について褒めたりイマイチだと言ったりするときには「どこで、どんな使い方をする場合か」を明示するのが必須だと思うからです。レビューに記された不満ポイントが実は環境依存で、他の多くの方には何の問題もなかった、なんてことがよくあります。
A&ultima SP3000 や NW-WM1ZM2 でインピーダンスが 300Ω あるヘッドフォンをドライブできないと気にする方は見かけません。2シーターのスポーツカーに対し、キャンプの荷物は積めない、車中泊はできない、というのが気にならないのと一緒です。

「出先のカフェや職場」使用が私の購入動機

約三年続いた在宅勤務も終焉を迎え、外出することが多くなりました。結果「出先のカフェや職場」に適した DAP を欲しくなった次第です。
この用途に向いている DAP も過去には所有していたのですが、在宅勤務期間中に全く使用しなくなり手放してしまいました。言い換えますと、在宅勤務のあいだは良い環境、良い機材で音を楽しめていたということになります。

AK HC2 が手元にあったので音楽専用スマホと一緒に持ち歩いてみました。コネクタ部分に気を遣うことと機材の出し入れを面倒に感じることとの二点で、音を楽しむ気分は DAP のときよりも落ちました。
カフェでの時間潰しが 30分未満だったりすると、上述のネガティブな気分が理由で音楽を聴かずに過ごしてしまっていました。DAP を所持していた頃なら 15 分でも音を楽しんでいましたので、ずいぶんな変わりようです。

機種選定

「出先のカフェや職場」で楽しむための機種というのは選定条件のトップにありましたが、そこにもう一つ条件を加えました。それは「新しめの Android OS に対応している」ことです。
この文章をお読みの方なら、きっとご存じでしょう。音楽ダウンロード販売サイト「e-onkyo music」がストリーミングに対応している音楽配信サービス「Qobuz」に移行する準備を進めています。いまから楽しみで仕方ありません。
せっかく DAP を買うのなら、このサービスがローンチした際に使える可能性が高いものを選んでおきたい。そのためにつけた条件です。

最初の候補

すぐに上がった候補は、当然のようにこの二機種です。

どちらも文句なし、性能が用途にピッタリ合う最新機種です。両メーカーとも設計思想にブレがない。素晴らしいと心から思います。

ところが、完全に個人的な理由で「ときめき」ませんでした。理由は二つあります。
一つ目に、お金の話をするのはしんどいのですが、「高価」に感じるのです。価格は変動しますので、最新状況は上記リンクでご確認をお願いしますという前置きをしつつ。どちらもカバーや保護フィルムなどを込みで見積もりますと「10 万円越え」です。コロナ前の時代なら、この用途ですと 5 ~ 6 万円程度でした。10 万円も支払うのなら、カフェで使う「道具」以上の感動や喜びが欲しいです。
二つ目は更に個人的な理由になってしまうのですが「どちらも想像を超えなさそう」というものがありました。A&norma SR35 ですと、所有している AK HC2 の延長線上の音ではないかと思ってしまいます。NW-ZX707 ですと、NW-WM1Z と NW-ZX300 の二台持ちをしていた時期に携帯性と音の好みとのトレードオフで、敢えて携帯性の劣る NW-WM1Z を選び持ち歩いていたため、もし NW-ZX707 を買ってしまったら NW-WM1ZM2 の音を欲してストレスを溜める結果になるのではないかと思ってしまいます。

繰り返しますが、どちらの機種も期待を裏切らない製品だろうという確信を持っていました。しかし、個人的な懐事情とオーディオ遍歴がブレーキをかけてしまったというだけです。

追加候補

本命の二機種を見送り第三の選択肢として検討したのが「HiBy R6 Pro II」です。
ヘッドフォン、イヤホン、据え置きタイプの機材などで中国メーカー製のものは数多く愛用していますが、DAP はいちど痛い目を見てしまい評価を下げていました。
応援している会社しか社名つきで厳しい意見を申し上げたくないので会社名と製品名は伏せますが、その DAP は「ありえない。この人たちは音楽を愛していないか、ふだん自社製品で音を楽しんでいない。こういう思想の人には良いものを作れない。」と思ってしまうような製品でした。

何が起こったかといいますと、その DAP に付けている音楽再生アプリ*2で「ギャップレス再生」が出来なかったのです。つまり、クラシックやノンストッブミックスなどを聴くと、曲の途中で無音が差し込まれるのです。この状態が「仕様」だそう。この DAP を速攻で売却したことは言うまでもありません。この開発者たちには「死ぬまで自社の DAP と再生ソフトしか使ってはいけない。」という制裁を科したいですね(苦笑)。Astell & Kern や SONY なら、きっと社内で「不具合」と称し直すまで販売しないでしょう。

そんな信頼を欠いた状態ですので、同じ中国でも違うメーカーとはいえ 10万円クラスの DAP を「ダメなら売ればいいや」と買う気にはなれません。しかし、HIBY だったら試しに買ってもいいと思えました。
このメーカーは自社の音楽再生アプリ「海貝音楽」を Android 用の無料アプリとして配信していました。ふだん Android 端末で USB Audio player pro をメインに使用している視点で見ても「もしも無料アプリのなかからしか選べなかったら海貝音楽にするかな」と思える出来栄えです。もちろんギャップレス再生可能です。

Google Play で配信している再生アプリ「海貝音楽」

アプリ「海貝音楽」への安心評価があるのと、このメーカーの製品はどんな音を奏でるのだろうという「ときめき」があるのとで、新作 DAP の HiBy R6 Pro II を選びました。この DAP に関するサイトの説明で、無意味なパワー競争から脱却しイヤホンで最高の音を求める方向に進んだ書いてあるのを見ました。いいですね。

外見

入手にちょっと時間を要してしまいました。
最初に注文した店舗では在庫が無く、予約扱いで待っていたら「更に半月ほど待ってほしい」と連絡がありました。待っても良かったのですが半月後も確約できない様子でした。できれば早めに入手したい状況でしたので、キャンセルして在庫のある店舗から買いました。

開封

開封直前の外箱です。裏面は日本語も記載されています。
バーコードやシリアルはボカしました。箱が汚れていたわけではございませんです。

HIBY R6 Pro II の外箱

箱は蓋を上下に開ける形式です。
開けると DAP 本体が現れます。二層になっており DAP 本体の層を取り外すと下層に付属品があります。インストラクションカードの入った箱を取ると DAP の革ケースが出てきます。

HIBY R6 Pro II 本体の下にインストラクションカードや付属品が入っている

新作の DAP や売れ筋ではない DAP ですと、ケースを選んで買うことは適いません。最初から付属しているのは楽でいいです。

付属品。スペアの保護シート、各種カード、USBケーブルと変換コネクタ。

付属品を写真に収めました。この保護シートは予備です。本体には最初から保護シートが貼付され、あとは外フィルムを剥がすだけで装着完了という状態になっています。

HiBy R6 Pro II 本体

箱から取り出した直後の状態です。貼付済の保護シートには外フィルムが残っています。バーコードやシリアルのシールは保護シート上に貼ってあるため、剥がす際にゴミが残る心配はいりません。写真のバーコードはボカしてありますが、現物は綺麗に印刷されています。

波打つようなデザインにより「本体の上部が下部より厚い」ように見えますが、同じ厚さです。目の錯覚を感じる面白いデザインですが、ケースに入れてしまいますので楽しめるのは今のうちだけです。

箱から取り出した直後の HiBy R6 Pro II 本体

保護シートの外フィルムを剥がした状態

大きさがわかるようにスマホを並べてみました。iPhone 6S Plus とほぼ同じサイズです。この iPhone、古い端末ですが 3.5mm イヤホン端子のある貴重なデバイスです。

(左) HIBY R6 Pro II (右) iPhone 6S Plus

端子など

接続端子は本体下部に集中していまして、上部には何もありません。このことに後々感動することとなりました。

本体上部は何もありません

下部。(左二つ) LineOut (中) USB-C (右二つ) PhoneOut 

アナログアンプに接続できるラインアウト端子があるのが、HIBY の特徴かもしれません。高出力競争から離脱し「イヤホンで高音質を追求しました」「大型ヘッドフォンにはアンプを使ってください」という思想は好感が持てます。向かって左側がアンプに接続するラインアウト、右がヘッドフォンに接続するフォーンアウトです。
誤挿入でイヤホンや耳を壊す恐れがあるため、撮影後ただちにゴムキャップ*3ラインアウトを塞ぎました。
よーく見ると端子上部にラインアウトかフォーンアウトかが書いてあるのですが、印刷ではなく彫り込んであるので目立ちません。爪で削れる印刷で目立つよりこのほうが良いです。
次に、microSDカードの挿入口です。

microSDカードの挿入口

挿入時に奥まで押し込むとカチっとロックされ、取り出すときも奥まで押すと手前に数ミリ出てくるタイプです。挿入口の面が外と揃っていて段差が無いせいか、ゴムキャップはありません。ケースに入れて見えなくなりますし防水でもないので、キャップ無しでも気になりません。

ケース

本体の左右が波打つデザインに合わせ削れているので、その部分がケースではどうなっているか写真に収めました。収納する側に切り込みがあり、この切り込み部分にマグネットが仕込まれていてガチっと接続するようになっています。

切り込みとマグネットにより、本体の挿入がスムーズにできるケース

アプリ、UIなど

Android OS なので電源オンで即再生とはいかないでしょう。諸々確認してみます。

起動直後

言語選択と時刻設定だけで済みました。日本語もファーストビューにありました。

起動直後。日本語も選択できる。

Android OS の設定

OS の設定項目をひととおり確認し、必要な設定変更を行います。
全ての設定について紹介するとすごい量になってしまうので、設定項目の画面を紹介いたします。画像が縦に長くなりましたので、次のアプリ紹介の画面と並べてあります。

デフォルトでインストールされているアプリ

インストール済のアプリを画面に収めました。前項の設定項目と合わせて一枚の画像にしました。ご確認ください。

(左) OSの設定項目 (右) デフォルトのインストール済アプリ

最低限のアプリと言ってよいかと思います。数が少ないので、全て確認して気になるものを無効にしていっても手間でないかもしれません。音楽再生アプリはもちろん海貝音楽です。Google Play ストアがインストール済ですので、必要なものは簡単に加えることができます。

オーディオ設定

OS の設定項目のうち、オーディオの設定だけは画面に収めてみました。
DAC のフィルタ切り替えやアンプ回路の切り替えなど、この機種向けに用意されたものが収められています。

オーディオ設定

各項目の説明はメーカーのサイトに委ねますが、一つだけ想定外で感動した「最大音量」の機能を紹介します。
これは、音量を上げる操作をしたときに「これ以上は音量が上がらない」というキャップを設定する機能です。ここを例えば 30 にしておくと、音量操作で 30 以上にすることが出来なくなります。これにより、意図しない音量アップ、例えば曲送りのボタンを押したつもりが音量アップだったりしたときに、爆音になって耳を傷めてしまうことを防げます。
AK HC2 の記事 [スティック型DAC「AK HC2」でハイレゾストリーミングを気軽に聴く] にて、突然音量が最大になり耳を傷めてしまい医者に診てもらったことを記しましたが、この機能はそのような事故の防止に役立ちます。ユーザー思いの有難い機能です。近年の DAP には見られる機能なのでしょうか? もし、あまり見られないものなら、全ての DAP に欲しいです。

スペック表示

設定画面内にスペックを表示する項目があったので画面に収めました。公式サイトや専門サイトの解説記事で書かれているとおりで補足することはございませんが、主観的な感想として「4000 曲近く入れた状態で海貝音楽のアプリは滑らかに動きましたし、Amazon Music のアプリも問題なく動作しました」と付け加えたいと思います。
インプレッション段階ではスペック的な不満はございませんでした。
サービスに向けて準備中の e-onkyo music × Qobuz でも使用できる可能性を考えて選んだので、今から動作がもっさりしては困ります。問題なくて良かったです。

HiBy R6 Pro II のスペック表示。一部ボカしてあります。

通知パネルにある素敵な機能

時刻やバッテリー残量が表示されている画面上部のステータスバーを下げると表示される「通知パネル」に素敵な機能があったのでご紹介します。

通知バネルにある「Flip vertically」という機能

端子の説明を書かせていただいた際に「下に全部集まっていて上に何もない。後々感動することになった」と書きましたが、この機能がそれです。

これをお読みの方は、イヤホン端子が上にある DAP と下にある DAP、どちらが好きでしょうか。どちらかが絶対的に良くて、どちらかが絶対的にダメというものでもないので悩むかと思います。私は普段は上にある方が嬉しく、椅子に腰かけて曲のザッピング操作をしているときは下にある方が嬉しいです。感覚的には 7割方の操作で上が嬉しく、3割方の操作では下の方が嬉しいです。

この「Flip vertically」をオンにするとこうなります。下の写真をご覧ください。

「Flip Vertically」オンの状態

端子が全て上に集まっている状態に変わりました。片方に端子が集まっていて反対側が平らなことに、こんな意図が込められているとは思いませんでした。
更に凄いことに、筐体が波打つ模様に合わせ削り込まれていますが、これが点対称・対角線上に位置しているため上下逆さにしたときの握り心地まで同じなのです。

上下ひっくり返しても同じ使い勝手という DAP は初めてです。
「なぜ片方に端子を集中させていたか」「点対称のデザインにどんな意図が込められていたのか」この上下反転に感動し、一発でファンになりました。デザイナーがどんな方なのか知りたいです。

音の話を少しだけ

最も大切ですが、もっとも軽率に書けない音の話を少しだけしたいと思います。
イヤホンやヘッドフォンをとっかえひっかえしつつ 5 ~ 6時間ほど聴きました。まだ全然聴いたうちには入りせません。
また、これを言ってしまうと元も子もないのですが、音の決まる支配的な要素はイヤホン・ヘッドフォン側でして、DAP の影響力はさほど強くもありません。
ですので、以下の文章は「あくまで第一印象。今後この印象がどういう風に変わるのか確認するためのメモ」という雑な文章としてお受け取り下さい。

一言でまとめると「クリーンで滑らかだなぁ」という感想です。

癖が無い感じ

JVC のポタアン SU-AX01 や SONY の NW-WM1Z などは音に艶があるという印象をすぐに感じたのですが、この機種は、そういうものがありませんです。手持ちのものだと、Gustard の DAC A18 や Chord の ポタアン Hugo2 の系統に属する印象です。流麗で滑らかだけど分解している感じです。Gustard A18 は、中音域に芯や密度を感じて、それが低音域や高音域にふわっと広がっていくようなイメージがあるのですが、この DAP はそれに近いです。
酷くシャりついた生音の多重録音で暴れまくる高音域をどう裁くかという試聴に、椎名林檎のアルバム「日出処」の NIPPON *4 の間奏を普段使っています。上記の印象がどの程度のものか知るために聴いてみました。かなり抑え気味に鳴らしていました *5
Hugo2 に近いという印象が正確かどうか確認するため、いまいちど聴き比べてみました。Hugo2 には FOSTEX の大型ヘッドフォン TH-909 を組み合わせることが好きなので、敢えて R6 Pro II にも TH-909 を接続してみました。曲は、たまたま目についた H ZETTRIO のアルバム Beautiful Flight のなかから Beautiful Flight です。
結果、確かに似ていました。似ていましたが R6 Pro II のほうが軽かったです。Hugo2 のほうが中低音、ダブルベース*6の音に響きがあります。シンバルの音は R6 Pro II のほうがシャリンとしています。この感想、注意しないといけないのは TH-909 を使っているという点です。R6 Pro II で TH-909 サイズのヘッドフォンを使うこと自体がイケてない可能性があります。この軽やかさが、組み合わせとして不適切なもの故のものか地で何を使っても同傾向なのか、これから確かめていきたいと思います。

ノイズの心配はなさそう

Moondrop の KATO や JVC の HA-FW10000 など手持ちのダイナミック一発イヤホンでは全くノイズを感じませんでした。ノイズ確認のため、敢えて普段使わないマルチ BA のイヤホンを引っ張り出してみました。手持ちの機材に次々と刺し、ノイズが出るもの出ないものとを行き来しました。結果、R6 Pro II はノイズが出ない方の部類に含まれました。

DAP 可のヘッドフォンなら大丈夫か

Focal Stellia は元気に鳴っていました。SONY MDR-Z1R もパッと聴きは悪くなかったです。TH-909 は一曲だけ真剣に聴きました。Gain middle の 30% 音量で充分な音の大きさでした。しかし、重要なのは音量ではなく音の立ち上がりや捌き方です。きちんと聴くと「もう少し」とか「厳しかったか」などと言いたくなる部分が見つかるかもしれません。

アンプの A と AB はわからなかった

アンプの A と AB の切り替えですが、ちょっと試しただけではわかりませんでした。唯一「あっ」と感じたのは MDR-Z1R のパッと聴きの際にバスドラムの立ち上がりが気持ち鋭くなった気がしたときぐらいでしょうか。これも気のせいかもしれません。
UI 操作一発で切り替えられるようにはなっていますがデジタルに変わるものでなくジワっとアナログライクに変わるんじゃないかとか、ノイズ処理や歪に関する効果なら音の消え際を楽しめるような良好な環境下で試さないと感じられないのではないか、等々と言い訳を考えて「ちょっと試してすぐに実感できなかった自分」を慰めました。

おまけ、やっぱり Amazon Music はダメ

過去の記事 [Amazon Music HDをビットパーフェクトで聴く(前編)] にて、Android OS の DAP では Amazon Music をピットパーフェクトで聴けませんと記しました。久しぶりに新作 DAP を買いましたので、状況が変わっていないか試してみました。結果、相変わらずダメでした。どういう挙動か気になる方は、上述の (後編) をご一読ください。
尚、この DAP がダメではなく全滅ですので、その点は誤解なきようお願いします。

Amazon Music は相変わらずダメです

(2023/5/31追記) 音について感じたこと

だいぶ聴きましたので音について曲紹介や判断ポイントを付けながら書きはじめたところ、長文になり終わりが見えなくなってしまいました。このままですと書き上げた頃には「遅すぎた」となりかねないので、結論だけこちらに追記したいと思います。

音源にシビア

優秀な録音には美しく応えますが、そうでもないものは容赦なく鳴らします。過去、CD 音源で「これは良い」と思っていたものを HiBy R6 Pro II で聴くとノイズフロアの高さや僅かな音の歪みなどが耳につき「この程度の音だったっけ」となってしまいました。元々イマイチだと感じていた音源は聴くに耐えなかったです。手元に残している他の再生機が、各々方向性は違えど「イマイチな音源も、それなりに美しく奏でる」能力をもっていることもあり、ここまで残酷な再生機を所有することになったのは初めてです。

定位がよい

手持ちのイヤホンですと平面型の Letshouer S12 を使った時だけ、そして音源を選ぶという条件付きですが、定位が非常に良かったです。アンドレア・バッティストーニ指揮のチャイコフスキー交響曲第5番(Flac 96k)を聴いたとき、各楽器がどの位置で鳴っているかが目に浮かぶように分かり感動しました。ヘッドフォンやイヤホンは管弦楽団のホール録音を聴くことに向いていない、あまり良くないと思っていたのですが、この DAP で考え方を変えました。この DAP に向いていると思いますし楽しいです。

アンプの A と AB は鋭さに出る

ヘッドフォンよりイヤホン、低感度より高感度で差がしっかり出ます。A から AB に切り替えると鋭く荒くなります。ロックとか打ち込みサウンドなら AB が向いていると思います。

今回はここまで

購入後インプレッションと称しまして、入手後の僅かな時間で得られる程度の情報を記事にしました。この製品は、少なくとも過去にあった「やってしまった。私には合わない。新品同様の美品状態で次の方へお譲りする」という結果にはならなさそうです。さっそく持ち歩き使ってみます。使い続けた結果を文章に出来そうになったら、また記事にするつもりです。

この記事を更新中にファームウェアのアップデートが入りました。起動した直後に続き二回目です。結果、曲が終了し次の曲が始まるときにごく小さな「ザッ」という音が入るようになりました。頑張って直してほしいです。

常日頃、開発者の心意気は細部に宿ると思っております。本体いっぱいのスクリーン、下部に集中した端子、点対称の削り込みと波打つデザイン、全てが「上下反転」に繋がっていることにノックアウトされてしまいました。工業製品のデザインで感動したのは久しぶりでした。パワー競争から脱却したことも同様です。
音楽を好きな者が普段から持ち歩くというシチュエーションをデザインで表現できていると思います。

HIBY というメーカーの製品はこれが初めなので知らないのですが、他の製品もこのような「心意気が細部に宿った」製品なのでしょうか。それとも、この製品だけが特別なのでしょうか。これからの製品にも注目したいと思います。

*1:その裏をついて、重く大きくしただけの「見掛け倒し」もありますが、総じて小型軽量で良い音というのは見つからないです

*2:自社の DAP の性能を引き出して最高の状態で聴くことができるようにするのが自社アプリの役割である、というのは [Amazon Music HDをビットパーフェクトで聴く(後編)] にて説明いたしました。

*3:ゴムキャップは付属していません。付属されてもいいですね。

*4:ベストアルバムなどの他のバージョンはリマスタリングで音を整えてしまっています。このテストに向いているのは 96kHz 24bit 版の「日出処」に限ります

*5:暴れているのが悪いとは思いません。この曲の聴き苦しい高音はハイレゾ黎明期の粗削りなマスタリングを感じさせ、それはそれで趣があります。

*6:ウッドベース