オーディオ 試行記録

多くの個人プログやネット記事に助けられました。私の経験を還元したくです。

T60RPmk2 購入後インプレッション

T60RP 50TH ANNIVERSARY についての 過去記事 で、好きな言葉ではないと前置きしつつ私の所有機種のなかでは最もコスパのよいヘッドフォンと記しました T60RP が二代目にモデルチェンジし T60RPmk2 となりました。

皆様のレビュー記事を待って購入しようかとも思いましたが、どのようなご評価が集まっても結局は買うだろうからと購入してしまいました。半年から一年と長い期間使用してからの記事と比べますと、インプレッションは評価が固め切れておらずイマイチだと感じるのですが、お役に立てていただくには速度感も大切なのではないかと思い、今回はインプレッション形式にしてみました。中身の薄い記事ですがご笑納ください。

T60RPmk2

購入動機

長いあいだ活躍していた、いや未だに活躍し続けている T60RP が代替わりしたということで購入しないという選択肢はありませんでした。私のように迷わず買われる方も多いのではないかと思います。
いつも最初に軽くメーカーに関する話題に触れてから該当機種の記事を記すのですが、FOSTEX については冒頭の 50TH ANIV. の 過去記事 で記しておりますので割愛したいと思います。お時間許す方はそちらをお読みいただければ幸いです。

FOSTEX の平面型

過去記事で歴史ある会社のブランドと記した FOSTEX ですが、平面型のドライバーだけに注目しても長い歴史がございます。平面型と私は呼称してしまっていますが正式名称は全面駆動型のようです。振動版そのものを指し示す際には平面振動版と書かれていました。

この駆動方式を Regular Phase の頭文字 2 つで RP と呼びブランド展開されておりますので、以後は私も RP と記します。

T60RP 以前

T60RP を私が購入した時には紹介冊子が含まれていました。歴史があるメーカーならではの興味深い内容です。この記事執筆時、FOSTEX のサイトに PDF があるのをみつけましたのでリンクをご案内します。

RP Series Historical Lineup

半世紀前の製品から紹介されておりますので、ぜひご覧ください。

T50RPmk4

RP ドライバーが改良、代替わりして登場した最初の機種です。発売は 2024 年 6 月 と執筆時より約 1 年前です。改良ポイントに関する解説が商品サイトにございますのでリンクをご案内します。

T50RPmk4 | Fostex(フォステクス)

RP ドライバー以外の改良ポイントも多く記載されておりまして、そのうちのいくつかは T60RPmk2 にも踏襲されております。

TH1000RP TH1100RP

2024 年 9 月に発売されたフラッグシップ機です。この機種以前のフラッグシップはダイナミックドライバーでバイオダイナ振動板だったのですが、遂に平面振動板を採用した最上位機種の登場となりました。

(左) TH1000RP (右) TH1100RP

こちらは同じ RP 技術でも最上位機種向けにプレミアム RP ドライバーという大型のものを新規開発したそうです。旧機種の三代目ドライバーや T50RPmk4 の四代目ドライバーの構造の違いも商品サイトで図にしてありました。

TH1000RP | Fostex(フォステクス)

残念ながら私はまだ未試聴です。一度聴いてみたいです。

T60RPmk2

そして今回の T60RPmk2。発売は 2025 年 4 月です。T60RP は T50RP をベースにオーディオファン向けの機種として仕上げた兄弟みたいなもののため、RP ドライバーは T50RPmk4 と同一です。

余談

久しぶりに小冊子を読み返しましたが「もったいないな」と思いました。ヘッドフォンは商品ですから最後はプロダクト単体の性能、装着感や音質などといった機能勝負となりますが、歴史や物語というのは魅力として商品を輝かせるのに一役買います。アピールをする必要はありませんが半世紀の重厚さを感じる表現方法でブランドサイトなどを用意いただくなどして「語って」いただいた方が良いと思いました。作り手の語り方で、大切にしているものって伝わるんですよね。

お値段とか

私が T60RP を購入したときは確か 3 万円ちょっとでした。その後コロナ禍であらゆるものが値上がりし、為替は円安に振れ、 T60RP も 4 万円台半ばまで価格が上昇しました。そして、このたびの T60RPmk2 は Amazon の公式ストアで 6 万円台半ばという価格で購入しました。

ほぼ倍ですね。
この倍という金額は購入者視点ではどう感じられるものかを考えました。日本人の平均所得の推移を記したサイトを見てみましたら、ちょうど私が T60RP を買った 2018 年から 2022 年までのデータがありまして、約 4% の上昇幅でした。ベアの激しかった 2023 年と 2024 年の分を合わせて適当に 12% と置いて加え 16% といったところでしょうか。
ついでに東京都の最低時給の推移を見てみました。2024 年は 2018 年比で 18% 高くなっていました。
一方で 2019 年に消費税が 2% 上がってます。つまり購入者側である我々の所得は 1割半程度しか上がっていないというのが現実です。

昔のようなカジュアルな入門機価格ではなくなりましたね。それでも、他の機種と比べれば高くないと思います。ヘッドフォンオーディオが、庶民の娯楽から離れ始めたのかも知れません。その代わりといってはナニですが、今はイヤホンが元気に見えます。

外見など

せっかく旧機種も手元にありますので所々で混ぜつつ記してみます。

開封

外箱に商品名だけでなくシリアル番号も入ってました。下の写真はボカしてあります。

(左) T60RPmk2 の外箱 (中) 開けた直後 (右) 内箱

昔はどうだっただろう、シリアル番号なんて入っていたかなと保管場所を軽く調べたところ、TH900mk2 Onyx Black の外箱がすぐ見つかりました。そこには T60RPmk2 の外箱より大きくしっかりとシリアル番号が書かれていました。少なくとも外箱にシリアル番号は初めてではないようです。
「お前 Onyx Black も買ってるのか ! 」というツッコミは受けます(笑)。私の購入当時よりお安いようなのでご興味ある方はどうぞ

TH900mk2 Onyx Black 水目桜漆塗仕様

次に内箱を開けたところと内容物です。

(左) 内箱開封直後 (右上) シートを外した状態 (右下) 内容物

本体のほか、説明書、袋、ケーブルがありました。今回は小冊子はなしですね。

各部位

ヘッドフォンの各パーツについて順に記します。

ヘッドバンド

初代と同じでした。

 ベッドバンド
(左) T60RPmk2 (右) T60RP

50TH ANIV. では違うヘッドバンドを採用していましたが、元に戻っていました。その記事で「50TH ANIV. 版の方が側圧が緩めで好み」と語りましたが、どうやら少数派だったようです。私にはちょっとキツめで耐え難いのですが、一度テストマーケティングしていただいて結果が出たような格好なので諦めもつきます。側圧には外れにくさや音質などの観点もあるので、だいたい多くの人が許容できる限界まで圧が上がる傾向にあります。この T60RP の程度の側圧なら、多くの方が問題ないとおっしゃるとも思います。

イヤーカップ・ハウジング

使用している木材に変更がありました。

イヤーカップ
(左) T60RPmk2 (中) 50TH ANIV. (右) T60RP

素材種は写真の順に、左・黒胡桃 ( ウォールナット )、中・アフリカンパドック、右・アフリカンマホガニーです。イヤーカップが同じ形状でも材質が違えば音は変わります。同じ木材同士であって種類によって硬さや密度も異なりますので音が変わってきます。楽器でもよくある話ですね。

今回採用された黒胡桃ですが、これが初めてではございません。2023 年 2 月 に初代機でも黒胡桃を採用した、 T60RP(WN) が数量限定で発売されています。この数量が相当少なかったようで入手競争が激しく、瞬く間に販売終了しました。私は買い負けた一人です。

このたび mk2 で黒胡桃が採用されたのは、テストマーケティングでよい手ごたえや成果を得られたということでしょうか。買いそびれた私としては黒胡桃の T60RP を mk2 という形で入手できたのは嬉しい限りです。

また、イヤーカップにあるスリットが下から上に移動し、イヤーカップとヘッドバンドを結ぶ配線がなくなっているのには気づきましたでしょうか?下に拡大した写真を貼ります。

初代にある配線が mk2 にはない

この違いは大きな仕様変更です。

イヤホンやヘッドフォンは左右どちらからも同じ音が出る必要があります。またイヤホンやヘッドフォンはハウジング形状で音のチューニングを行います。つまり、イヤーカップが左右で違う形状というのは音質面でマイナスのハンデを負っていることになります。

(左) mk2 は両方から (右) 初代は片方から

上の写真は mk2 と初代のケーブル差し込み口に丸印をつけたものです。初代は左耳のハウジングにだけ差し込み口がありました。一ヶ所で済むのは利便性が高いのですが、そのために

  1. 左のハウジングにだけ差し込みジャックを埋める
  2. 左のハウジングから右のハウジングにケーブルを通す

という処理がなされています。イヤーカップからニョロっと配線が出ていた写真は 2 のためのものです。これを mk2 では両方に変更することで、左右同じ形状のハウジングにし、ニョロっと配線を取り除いています。利便性より音質という判断をしたわけですね。

なお T50RPmk4 では、左右両方に差し込みジャックを埋め込んで左右同じ形状にしつつニョロっと配線を残してあります。ケーブル差し込みが一本で済むのは先代と同じ、さらに左右のどちらに入れても OK で利便性向上という変更を選んでいます。

この違いは絶妙だと思いました。

尚、余談ですが音質追求の結果「差し込みジャックをハウジングに埋めない。外に逃がす。」という手段を取るイヤホンやヘッドフォンもあります。イヤホンですとこちらの IE 900 の過去記事にある写真をご覧になると、HA-FW10000 は完全に、IE 900 や A8000、Perpetua は巧みに逃がしてあるのがわかると思います。また、ヘッドフォンですとこちらの MDR-Z1R の過去記事にある写真をご覧になると完全に逃がしてあるのがわかると思います。この外への逃がし方にデザインセンスや美しさを求める方は立派なオーディオ沼の住人です(笑)。いまここに挙げた機種はどれも素晴らしいと思います。

ケーブル

仕様変更の入りましたケーブルです。
同梱されているのは 3.5mm ステレオミニプラグのケーブルと 6.3mm への変換アダプタで、バランスケーブルは別売です。ヘッドフォン側は 3.5mm 2極ミニプラグになっています。
初代 T60RP や TH900、TH909 などのケーブルは布被膜でしたか、今回はビニール被膜でした。T60RPmk2 だけなのか否かを調べてみましたら、昨年あたりからビニール被膜に切り替えたようでした。ビニール皮膜は柔らかく捻じれに強いので扱いやすいです。布被膜のケーブルをお持ちの方は実感できると思いまずか、捻じれに対する反発力が強いのですよね。

(左) ケーブル (右) プラグ差込口

この、ヘッドフォン側の 3.5mm 2極ミニプラグ。他機種との互換性が非常に高いです。つまり「リケーブルしやすい」です。私の知る限りでもぱっと FOCAL STELLIA、MEZE LIRIC。3.5mm の 3極を加えますと TAGO T3-01、HIFIMAN ARYA や SUNDARA Closed-Back ( 過去記事 ) などもそうです。イヤホンの過去記事で「リケーブルは物量勝負。多く試す方がお気に入りが見つかる」「徐々にコレクションが出来上がる」と記しましたが、T60RPmk2 は「他機種で構築したコレクションを活かせる」ということになります。

前の段落で、T50RPmk4 との違いが絶妙だと記した点がこれです。T60RPmk2 はオーディオ好きがリケーブルを楽しみやすい方に仕様を振り、T50RPmk4 は自身の機材レイアウト的に作業がしやすい方へ挿すという仕様に振ったわけです。

また、3,5mm プラグは入手も自作も容易です。自作に挑戦してみたい方向けに、付属しているケーブルの極性やサイズを紹介しておきます。

付属品のケーブルの極性と太さサイズ

一点注意したいのは、プラグ部分がヘッドフォン側に潜り込むので太いものは使えない点です。上の写真で 2mm ぐらい潜っていることがわかると思います。コレクションしていく際には太さにご注意ください。
記事冒頭の写真では、過去記事  SONY キンバーケーブルをプラグ交換で活用 で紹介した太いバランスケーブルを T60RPmk2 に挿しています。この記事のプラグなら T60RPmk2 にも FOCAL STELLIA にも挿さります。

私の 3.5mm コレクションは 3極で揃えています。同様に 3極でコレクションなさる方は未使用の接点の箇所が機種によって異なる点ご注意ください。上述の過去記事では HIFIMAN の極性が写真になっていますので、異なる例として SONY のものを貼ります。

SONYはマイナス(GND)が中間
イヤーパッド

初代と同じものでした。様々な記事を拝見しますに、皆様のご評価は悪くないんですよね。

T60RPmk2 のイヤーパッド。初代と同じ。

過去の記事で何度か「薄いイヤーパッドで耳にドライバーを押し付けるのが手っ取り早い」と記しましたが、モニターヘッドフォンと称されるものは目的上そうせざるを得ない部分があり、FOSTEX に限らずどこの会社のものも一様にイヤーパッドの評判はイマイチです。薄くて耳が痛いと言われがちの T50RP のものが T60RP では改良され評判が良くなったという文脈で評価として書かれていることが多いですし、その文脈であれば同意できるところではありますが、それは下を見て判断しているとも言えるのではないでしょうか。

「まぁ使ってみて判断すれはいいじゃないか」と1時間ほど素のままで使いましたが、やはり初代と変わらず耳が痛くなりました。T60RPmk2 のサイトで「長時間にわたるリスニングでも快適に」と謳っていますが、これは No. 過大表現だと言わせていただきたいです。同じ FOSTEX であれば、そのセリフは TH909 のイヤーパッドで使ってください、という話です。両種のサイズの違いはこちらのイヤーパッドに関する過去記事の通りです。T60RP クラスのイヤーパッドには「リスニング向けに耳への負荷を軽減しました」ぐらいの表現が適切です。

恐らく、メーカー側も上述のツッコミは覚悟して言っているのでしょう。50TH ANIV. ではベロア生地のイヤーパッド ( 過去記事 ) が同梱されておりましたし、更に今回は別売りのスエード調素材のイヤーパッドも発売しています。

イヤーパッド交換は大きく音が変わるうえに規格外のものでの試行錯誤も多いので、安易にお勧めし難いのですが、「装着感さえ何とかなれば」という可能性を感じたら皆様もトライしてみてください。

ということで、標準イヤーパッドは外してしまいます。

T60RPmk2 のイヤーパッドを外したところ

吸音材は、50TH ANIV. のものてなく初代のものでした。
現在、T60RP用に使い気に入っているイヤーパッドを買い置きしてありますので、それを装着します。

Headphone Memory Foam Earpads - Oval - Sheepskin Leather - Brainwavz Audio

イヤーパッド交換後 (左) T60RP (右j T60RPmk2

もし、これをご覧の方で「俺も買ってみようかな」と思われる方に申し送りさせていただきます。このイヤーパッドを嵌めるのは大変です。
純正品のイヤーパッドは、本体に引っ掛ける・埋まる生地の部分が数ミリしかないのですが、このイヤーパッドは 1cm 以上あります。これを入れ込むのに苦労します。今でこそ私も一発で成功させることができますが、昔は出来ませんでした。注意点を記します。

  • 埋まる生地の部分の一部を切り取って、純正と同じぐらいの数ミリまで短くするという改造はせず、そのまま挑戦してください。短くすると嵌りはしますが、締め付ける力が無くなり、自重を支えられずにポロポロと落ちるようになります。
  • 破れる恐怖を感じながら、引っ張り伸ばして嵌め込んでください。爪や刃物で傷つけない限りは何とかなります。傷が入ってしまと、そこから一気に広がります。
  • 装着後、イヤーパッドをクルクルとは回せません。回す際には、内側に指を入れて外す感じで浮かせ、僅かにずらし回すという動作を繰り返すことになります。「とりあえず嵌めてしまい、後で回して完了」ではなく「回さずに済む角度で最初から入れる」ようにしてください。
  • 耳の上半分の領域から入れ始め、耳の下半分の領域で最後に苦戦するようにしてください。終わりに近づくにつれ大変になりますが、そのときを耳の上半分の領域で迎えてしまいますと、ヘッドバンドが邪魔で作業できません。

音のことを少しだけ

インプレッション形式にしますと音がいちばん書けないです。やっぱり、日々のローテーションに新しい機材を加えて気づきを積み重ねるのが私にとっては確実なようです。
多くのレビュー記事を拝見し助けられていますが、あらためて記事を書かれる皆様の凄さを感じずにはいられません。

標準装備での印象

イヤーパッドを変えず、ケーブルを変えずで一時間程度は使用しました。付属品がアンバランスのケーブルでしたので、手元にある「ベストパフォーマンスがアンバランス」の機種と言えばこれということで Chord Hugo 2 で聴いてみました。

出来るだけいつも聴いていた曲を適当にザッピングしてますと「あれ、こんな音鳴っていたっけ」を所々で感じました。中高音域で小さめに録音されている音、マラカスやらトライアングルやら等の音が耳に入ってきます。

そのせいで、あれも聴いてみたい、これも聴いてみたいとなり、あっという間に一時間ほど経ち耳が痛くてヘッドフォンを外しました。

この段階で、ヘッドホンの基礎体力が上がったのか、それとも薄いイヤーパッドで耳に押しけられているのを誤った解釈しただけのどちらがで悩むことになりました。私の先代 T60RP はイヤーパッドを取り替えてしまっているため、同一条件比較ができませんので。

典型的なモニターサウンド

これはイヤーパッドが薄いせいだと前置きをしつつ。
前後空間が狭く左右が広いです。楽曲の音の左右パンニングは、正面、僅かに右、かなり右、完全に右だけとか細かく振ってあるものですが、このヘッドフォンの標準装備で聴いていると、ど真ん中から少し右にふれたら、すぐに大きく右にずれてしまいます。
正面を 0°、完全に右だけを 90° と定義し、10° 刻みで音の位置が右にずれたとします。0° から 10° に位置がずれた途端に 30° あたりにすっ飛んだ感じがします。この股が裂かれたような感覚は私は好きではありません。
イヤホンのレビューで音場について「前後は狭いが左右が広い」と評価されているものは、だいたいこれです。前回の qdc Superior EX の記事 でスタジオ用途の音楽関係の方は、スピーカーで確認をすることとヘッドフォンで確認することを分けていますと話しました。そのため、この世界の方々はモニターヘッドフォンの音場股裂け感覚について眼中にない感じがします。ヘッドフォンやイヤホンはそういうものだと。スピーカーじゃないんだから最初から求めていないと。貼りつき、股裂け上等。スピーカーでは聴き取れない微細な効果を聴き取れる高解像度に対して存在理由や価値を見出しご評価なされたりします。

そういった意味で優秀なモニターサウンドだと思います。繰り返しますが、かなりの部分はイヤーパッドが薄いことに起因します。ですが、基本的なヘッドフォンの仕上げ方という意味で、イヤーパッドを薄くして上記のような音に仕上げたということかと思います。例えば TH909 や SONY MDR-Z1R のような製品で薄いイヤーパッドを使い上記のような音を創るかといえば創りません。同じヘッドフォンですが住む世界が違うということかと思います。どちらが上か下かもなく、住む世界が違う。同じトラック競技でも 400m 走と 10,000m 走は別競技で比べられないように。

50TH ANIV. ではなく初代路線

音のチューニングは初代踏襲です。50TH ANIV. では中低音をグッと増していましたが、そちらではありませんでした。

弄ったあとでの印象

イヤーパッドを変えた後の状態ではありますが、初代との比較を交えていくつか記したいと思います。前段で記しましたが、このヘッドフォンは本来は薄いイヤーパッドで耳に音を貼りつかせて分析的に音を聴く道具です。空間的な配置や音のバランスを楽しめる道具ではありません。
木製のイヤーカップも前後傾斜のあるイヤーパッドも、ベースとなる元の素性を変えることなく T50RPmk4 との比較で音色に艶が出て股裂き感が減ったという味付けの範疇です。
そのような道具に対し、メーカーの設計意図と異なるぶ厚いイヤーパッドを装着しています。結果として、貼りつき感は緩和されますが、だからといって最初から空間的な配置が良くなることを目指して創られた製品と勝負できるわけがありません

ご自身が過去購入されて気に入っていたヘッドフォンがどのようなタイプだったかを踏まえつつ、かつ上記のような改造が入ってしまっている前提で読んでいただけますと幸いです。

音量が取りやすくなった

T60RP といえば音量の取れないヘッドフォンとして知られているかと思います。ヘッドフォンの価格が入門価格でしたので、まだ再生機に投資していない方が買ってしまい「音量が取れない」と嘆かれるケースをネットで何度か見かけたこともありました。

下に、丁寧に比較し同じような量感で聴き取れたときの音量の写真を収めました。

(左) T60RPmk2 (右) T60RP

かなり音量が取りやすくなっています。

だからといって、まだホータブル水準でも大丈夫という訳ではないのでご注意ください。FOCAL STELLIA ですと 17 相当の音量です。T60RPmk2 と同じ 21 にすると「この音量で聴くのはちょっと不味いだろ」という大きさの音量になります。
最近のパワフルな DAP なら心配ないという認識ぐらいが適切かと思います。

中音が少し増して明るくなった

T60RP は FOSTEX のダイナミックドライバーの機種と比べて暗い音という印象はお持ちでなかったでしょうか? それが少し緩和されてます。少しです。T60RPmk2 を聴いた後に STELLIA や TH909 を聴けばパッと晴れやかになります。あくまで、初代 T60RP との比較です。その効果か、小音量で鳴るマラカスやトライアングル、パーカッションなどの音で「こんなの鳴っていたっけ」に繋がったようです。聴いていてどちらが楽しいですか? と尋ねらたら mk2 を取ります。
暗い音というのが悪いとは全然思いません。STELLIA や TH909 のあと、MDR-Z1R を聴いたら暗いの一言に尽きます。MDR-Z1R には MDR-Z1R の良さがあります。
ところが、初代と mk2 ですと、そもそもそっくりの音なので「初代の良さがある」とはなりにくいです。50TH ANIV. みたいにチューニングが変わっていれば「どちらが好みですか?」となりますが、そうはならずです。

分解能が上がった様子

もともとそういうタイプのヘッドフォンですという話ではありますが、鳴っている小さい音に意識を向けると細かい音がしっかり聴き取れます。「やたらシャリつき重ねられている高音を解せるか」でこのブログでは定番の NIPPON で試してみました。

椎名林檎-日出処・NIPPON ( Amazon Music )

初代 T60RP では耳をヤスリでなでられるような届き方をするものが、mk2 なら音の抑揚に変わって届きます。

最後に

モニター用途のヘッドフォンというカテゴリ内でオーディオ的な楽しみ方をするというスタイルの、一つの完成形というのが私なりの現段階での感想です。そして、初代 T60RP との比較ですと確実な進化を感じます。T60RP がお好きな方は一度お試しいただければと思います。

リケーブルを試したりアンプをとっかえひっかえしたりなど、まだまだ試してみたいことは沢山あるのですが、始めてしまうと悩みだして記事のアップが1年後になったり、アップをやめてしまったりするので今回はこの辺までにしてみます。