オーディオ 試行記録

多くの個人プログやネット記事に助けられました。私の経験を還元したくです。

JVC SU-AX01 用の充電ケーブルを作る

既に数年前に販売が終了し、中古品でさえ流通量の減っている JVC の SU-AX01 というポータブルヘッドフォンアンプ用の充電ケーブルを作成しました。
今更という感覚は非常に強いですが、私のように使い続けている方や中古の掘り出し物を手に入れたばかりという方がいらっしゃるかもしれないので記事に残しておきたいと思います。

作成した SU-AX01 用の充電ケーブル

ポタアンの完成度が高まった時代の製品

JVC の SU-AX01 という製品を簡単にご紹介します。
発売されたのは 2016/11。その一か月前には、SONYウォークマン NW-WM1Z が発売されており、また一か月後には iFi-Audio の micro iDSD Black Label が発売されています。この頃のポタアンは、執筆している 2022/12 時点でも機能不足を感じない完成度の高いものが多いです。

市場に流通するほぼ全ての音源周波数に対応

この時期に中~高価格帯で発売された DAP やポタアンは、PCM で 384kHz以上、DSD で 11.2MHz 以上の周波数に軒並み対応していました。ここから更に 1~2 年前に遡った製品や、同時期でもエントリークラスの製品ですと、PCM の上限が 192kHz だったり DSD の上限が 5.6MHz だったりするものが多かったように記憶しています。
当時ダウンロード販売されていた音源を見ますに、このスペックであれば再生できない音源は無いという状況でした。記事を書いている 2022/12 時点で 6年も経過しているのですが、相変わらず不自由しない状態です。わたしの手持ちの音源も DSD の 11.2MHz が随分と増えましたが、それ以上のものは所有していません。オーディオ機器として音質が好みであれば、今でも当時の製品で十分楽しめます。

いま通用しないものがあるとすると・・・MQA とバランス接続

逆に当時の DAP やポタアンに欠ける面があるとしますと MQA フォーマット対応とバランス接続対応が挙げられるでしょう。

MQA対応

MQA フォーマットについては対応している製品が当時は非常に少なかったです。2016年時点で対応していた製品をパッとは思い出せないほどです。いまは対応する機器が増えました。
一方、音源のほうはといえば 2022/12 時点でもさほど多くはありません。配信であれば TIDAL が MQA なのですが、そもそも日本ではサービスしていません。ダウンロード販売ですと MQA の音源も販売されるようになりましたが FLAC などの PCM フォーマットも併売されております。幸いなことに、欲しい音源が MQA フォーマットでしか売っていないというケースに私は遭遇したことがございませんです。MQA を狙い撃ちで必要とする方を除けば、今でも当時の非対応ハードウェアで不自由しないでしょう。  

バランス接続対応

バランス接続については、MQA のように「不自由しない」とはいかないかもしれません。現在主流の 4.4 mm 5極端子が JEITA の統一規格に定まったのが 2016/3。採用されたウォークマンが登場したのが 2016/10 です。

www.phileweb.com

つまり、2016年の夏までは世の中に 4.4mm 5極端子の製品が存在せず、各社バラバラな端子を使っていました。2.5mm 4極、3.5mm 4極、3.5mm 3極 × 2 など様々でした。この頃の機材をバランス接続で使い続けるには、変換ケーブル等を別途用意しなければならないでしょう。

そして、SU-AX01 でのバランス接続は 4.4mm 5極ではなく 3.5mm 3極 × 2 です。端子選定の経緯がこちらの記事で紹介されておりますので、興味を持たれた方はご参照ください。

av.watch.impress.co.jp

「ハイインテンシティモード」になる USB ケーブル

わたしの文章よりもプロの解説記事ということで、ちゃんとした解説が必要な方は先ほどの記事をご参照願います。
この SU-AX01 は外部給電のときに音質を向上する「ハイインテンシティモード」という仕組みを持っています。外部から給電すると必ずこのモードに切り替わるわけではなく、iPad 対応に対応した 2.1A ( 2.4A ) の Apple 純正アダプターを使用し給電したときのみ切り替わるようになっています。
せっかくのポタアン、せっかくのハイインテンシティモードです。ACコンセントの呪縛から開放されポタアンらしく持ち運べる状態でも、音質が向上したハイインテンシティモードで楽しみたいと考えたわけです。

iPad 高速充電の仕組みと SU-AX01

電力の供給を受ける iPad は、使われているアダプターをチェックして高速充電できるものだと判別すると、自分 ( iPad ) の抵抗値を下げて多くの電流を受けとります。このチェック方法と同じ仕組みが SU-AX01 内にあるため Apple 純正アダプターでの給電したときに限りハイインテンシティモードになります。
上述の解説記事にある「条件に合っていればモバイルバッテリを接続してもハイインテンシティモードに入る」との記載は、Apple 純正アダプターを模した振る舞いをするモバイルバッテリーであれば SU-AX01 はハイインテンシティモードに入る、と読み替えることができます。

市販品で実現する

やはり武骨な自作より綺麗な市販品ということで、Apple 純正アダプターを模す変換コネクターが無いか探したところ、見つけることが出来ました。

こちらの商品、AndroidApple を選択するスライドスイッチがあり、これを Apple 側にして使用しましたら、モバイルバッテリーでもハイインテンシティモードにすることができました。

自作に切り替える

紹介しました変換コネクターで当初の目的は果たせていたのですが、最近になってコネクター部分の出っ張りが気になるようになってしまいました。昔は全く気にしなかったのですが、乾電池駆動の WiiM Mini [ WiiM Mini 用電源の工作 ] を入手してからというもの SU-AX01 の使用頻度が急に高くなりまして、見栄えやコネクターサイズにも拘りたくなった次第です。

2.1A ( 2.4A ) Apple 純正アダプターを模す

市販品を使うなら検出方法を知る必要が無いのですが、自作となると知らなければ始まりません。いつものようにネット検索したところ、複数の方が iPad での高速充電に関する仕組みを調査記事にしてくださってました。ほんとうに有難いです。

それら複数の記事を拝見させていただき「自分としてはこれでやると決めた。正しいか確証は無いのだけど、たぶん動くだろう。」とした配線図を以下に示します。D- に 2.0(V) 、D+ に 2.7(V) 程度の電圧をかけると iPad は高速充電に切り替えてくれるようです。

作ってみることにした配線図

念押しで恐縮ですが、こちらは正式な仕様を確認のうえで設計したものではございません。多くの方の解析記事や説明記事を参考にさせていただき、適当に決めた根拠なきものです。このブログの筆者は、この配線図のケーブルを使っているのだという事実だけを受け止めていただければ幸いです。

ケーブルの工作

作るものは決まりました。あとは部品を揃えて手を動かすだけです。
以後の内容ですが、技術的に難しいことをしていないため詳しい方には説明不要、かつ、はんだ付け自体が手間という方には興味を持てないもののため詳細は省きたいと存じます。

使用部品紹介 ( 購入ないし使いまわし )

毎度のセリフ「加工しやすい部品を選定できれば勝負あり」ということで今回使用した部品の紹介です。

USBケーブルで使用した部品
USB-A プラグ部分

変換コネクタの出っ張りを無くすのが目的の工作ですので、配線図に書いた部分は全て USB-A 端子内に収めます。そんな都合のいいものを販売している店舗さんが無いかネットでずっと探し続けました。遂に見つけることができました。

www.aitendo.com

見つけたから作る気になりました。見つけられなかったら作っていなかったです。aitendo さん、お取り扱い有難うございます。

抵抗

本当は必要な分だけ買いたかったのですが、通販でバラ買いは難しそうでしたので「今後も使うかもしれない」と自分に言い聞かせ Amazon でセット買いしました。

配線図にある抵抗値ですが、最初は違う値でした。このセットが届いた後、含まれる抵抗値に合わせ配線図のほうを変えました。
当初は「とりあえず種類が多いものを買っておけば、直列に複数本並べ狙った抵抗値を作れる」と考えたのですが、最終的には「買ったものに合わせて配線図のほうを変える。」という方法を採りました。だったら種類が少なく安いセットで作れたと記事を書いている今は思います。

その他

頻繁にケーブルの抜き差しをしたくないのでスイッチをつけました。ケーブルは、既にメーカーの回収リサイクルで処分したタブレットに付属していたものをカットすることにしました。買わずに活用できる部品があると少し嬉しいです。

組み立て

配線図どおりに抵抗を並べ、はんだ付けします。
久しぶりの作業であまり美しく出来ませんでしたが写真を貼っておきます。

配線図どおりにハンダ付けする

ここまで出来ましたら、間違ってショートしたり断線したりしていないかテスターを使って確認します。大丈夫そうならモバイルバッテリーと SU-AX01 でハイインテンシティモードになるか動作チェックします。写真は省略しますが、うまくいきました。

動作確認後はケースに入れて完成です。

ケースに入れて完成。部品紹介で記していないEMIフィルターをつけました。

 

完成

実際に使用している様子の写真を撮りました。ハイインテンシティモードの青ランプが光っております。

自作ケーブルを使用した様子。イヤホン HA-FW10000 と組み合わせて。

写真では見切れていますが、上には乾電池駆動の WiiM Mini  [ WiiM Mini 用電源の工作 ] が載ってます。これのおかげで使用する機材が変わりました。Amazon Music HD を気軽に聴くために入手した AK HC2 [ スティック型DAC「AK HC2」でハイレゾストリーミングを気軽に聴く(解説付き) ] の頻度が大きく減り、SPDIF で接続可能な SU-AX01 がそこを埋める形になりました。

写真では折角なのでメーカーを揃えて HA-FW10000 のようなお高めのイヤホンを接続しましたが、今年の夏に2万円ほとで買った中華イヤホン LETSHOUER S12 に SU-AX01 と組み合わせてみたところ、聴いていてうっとりするような音色を奏でました。

ヘッドフォンと比べるとイヤホンは使用頻度が低いため、そもそも使用したことのない組み合わせがあったりします。この機会に意外な発見ができました。

こんなことを書いてしまうと、散財した自分の首を絞めることになりかねないのですが、オーディオはスペックや価格と比例して良いものになるデジタルガジェットとは違いますね。